11月初旬の薄曇りの肌寒い午前、ネイチャーランド・オムから養老の森を散策した。
目的は哺乳動物調査のために仕掛けてあるカメラの電池とメモリーカード替えと水生昆虫の採集。
紅葉が美しく、木々の葉が様々な色を目に焼き付けてくれる。すっかり秋の様相で、生き物たちは冬を迎える準備をしているに違いないと思いながら散策してみた。建物周りにはやはり冬越しのために集まった虫たちを発見。
クサギカメムシは樹皮下などで越冬する個体も見られるが、建物の中に入り込んでちゃっかり冬季を過ごす個体も多い。触って刺激を与えるとかなり臭いので要注意。
どこか目につかない場所で、さなぎになるために歩いていたリンゴドクガの幼虫。
鮮やかな黄色の毛におおわれ、頭のすぐ後ろには毛の束が見られ、その間には黒色の斑紋がある。近くのコナラの葉を食べていたのであろうか。
冬越しが目的ではないが、夏の名残りを発見。
ヒグラシの抜け殻が屋根の下の風雨をしのげる場所に、爪をしっかりとひっかけて存在を主張していた。
来年の夏には新たなセミが、羽化のためにこの建物の壁や柱を使うかもしれない。
養老の森中央口から入ってすぐ目に飛び込んできたのがツノゼミ。
この時期にまだ生きていたのかと驚いたが、黄緑色の葉の上に止まった黒っぽい塊に違和感を持ち、近寄ってみた結果だった。
道端のあちらこちらにはリンドウが咲き、殺風景なこの時期の地面に色を添えている。
リンドウの写真を撮影してふとその近くの低木に目を向けると、木の枝に丸い粒がついている。
葉の色を黄色く変え、すぐにでも落葉しそうな木はミツバウツギ。
そしてその枝にびっしりとついていたのは、ゴンズイノフクレアブラムシ。
みんなでストロー状の口器を枝にさしこみ汁を吸っている。
この種類は夏の時期にはノカンゾウなどの草にいるが、冬を前にしてミツバウツギやゴンズイに移動して生活している。
アブラムシの生活史は不思議で奥が深い。
水生昆虫の採集は、キャンプ場の中を流れる細流で行った。ムカシトンボのヤゴは、水の中で7~8年ほどを過ごし成虫となる、生きた化石と呼ばれるトンボ。きれいな水の川で見られるナミウズムシ。
その他にもカワトンボやトビケラの幼虫、ヒラタカゲロウやカワゲラの仲間の幼虫など、水の中は春を待つ虫たちで大賑わい。
冬の準備に入った養老の森には、夏とは違った景色の中で、生き物の息遣いを感じた。
文・写真:養老の森実行委員 守屋博文