風の強い冬のある日、ネイチャーランド・オムから養老の森を散策した。
今回も目的は哺乳動物調査のために仕掛けてあるカメラの電池とメモリーカードのチェック。
新しく設置した雨・雪除けのミニハウスもうまいこと機能している様子。
写真のニホンジカは昨年末撮影されたもの。
日影に雪の残る森だったが、梢の鳥や春を待つ樹木の冬芽、冬を越す昆虫などをゆっくり歩きながら観察した。
茅葺屋根の古民家周辺では、木から木に移動しながら餌を探している鳥を発見。
シジュウカラとヤマガラ、エナガ、コゲラはカラの混群として、一緒に鳴きながら移動している。
青空に生える白梅を見ていると、下の枝にイラガの繭を発見。
イラガの成虫として羽化し出てくるか、はたまた寄生されイラガセイボウが出てくるか、今のところは不明。
幹にはウメノキゴケが覆い、空気のきれいなことを証明してくれている。
ピザ窯の屋根にはアブラゼミの抜け殻がしっかりと爪を立てて止まっていた。
この時期にセミの抜け殻に出会うと、なぜか不思議な気分になってくる。
養老の森東口から入って行くと大ケヤキが存在を示し、必ず寄られずにはいられない雰囲気になってしまう。
ケヤキ独特の樹皮の剥がれたところをめくってみると、ヤノクチナガオオアブラムシの卵があった。すぐ近くにはアリも越冬中でじっとしていた。
春になるとまたこのアブラムシとアリの共生生活が始まる。
仕事の関係で最近冬芽をよく観察している。
歩いていてもすぐ冬芽に目が行ってしまう。
水辺に多いオオバアサガラやアブラチャンは大ケヤキのすぐ近くで、車に戻った近くではクリとミズナラの冬芽を観察。
冬芽のおもしろさはもちろん芽の形態にもあるが、葉の落ちた後に残る葉痕の形や、その中に形成されている水や養分を運んでいた管の維管束痕が何とも愛らしい。
オオバアサガラの葉痕をいくつも見ていると、ニコニコマークのように見えるものもあった。
冬芽の観察は当然この時期だけで、春になると大変身してまた私たちの目を楽しませてくれる。
オオバアサガラ冬芽 アブラチャン冬芽 クリ冬芽 ミズナラ冬芽
予定していなかったが、午前中ムササビが巣から顔を出したので、巣から出る時間に待ち伏せし観察。
ムササビは日没後30分ほどで巣から出て行動を開始し、朝方巣に戻って来る。このことは自動撮影装置による撮影でも確認されている。
夕方の撮影の準備をしていなかったので良い写真は撮影できなかった巣から出て巣箱の上で一休みし、この後すぐに杉の木を登って去って行った。
巣から出たムササビ 顔を出したムササビ(2020年12月撮影)
あっという間の1日だったが、来るたびに違う景色を見せてくれる養老の森は、まだまだ調べがいのある森と感じた。
文/写真 養老の森実行委員 守屋博文