紅葉が美しいと思っていたら、あっという間に冬の景観に変わってしまった養老の森。
ケヤキは青空に向かって葉を落とした枝をひろげ、ミズナラは黄葉から落葉、ネムノキはまだ緑の葉を残していましたが、種が目立っています。
こんな季節でもよく見られるアカトンボの仲間。森の中の開けた場所では 、キラキラと光る翅が秋空をバックによく見られましたが、今年はどういうことか、ナツアカネやアキアカネなどのアカトンボの仲間や、夏から秋にかけてその数を増すウスバキトンボもその数は激減でした。この現象は全国的なことのようですが、様々な要因が考えられるようです。
養老の森中央口入口付近にあるキャビンの壁面に、クサギカメムシが冬越しの場所を求めて飛来して止まっていました。この季節は冬越しの準備に入るカメムシの仲間が多くみられます。
冬色に移行しているこの時期、林床にはコケの仲間たちの緑色が目に入ります。みんな同じ種類のコケと思いきや、よく見るとそれぞれ特徴のある葉をし、中には胞子体から胞子を放出しているコケもありました。スギの切り株や倒木上、湿気のある地面や石の上、水辺など、この時期森でコケの観察もおすすめです。
土が露出いている場所には霜柱が広がりますが、近くにあった倒木を持ち上げてみると、ヒメフナムシの仲間が隠れていました。地面をよく見ると、トビムシやミミズなどの土壌動物の仲間も健在でした。
落ち葉の積もった林道を歩いていると、弱々しく飛んでいるガガンボの仲間を発見。ガガンボを含むハエの仲間は冬季でも飛翔している種類もあり、鳥たちの重要な食糧源となっています。近くにはまだ越冬場所が見つからないアカスジキンカメムシの幼虫がいました。このまま幼虫で冬を越し、春から初夏に成虫になります。その姿はこの幼虫からは想像できない色や形です。
森を訪れると必ず立ち寄る大ケヤキ。樹皮下にはヤノクチナガオオアブラムシの卵が産み付けられていました。アブラムシの生態は複雑で大変興味深いのですが、ヤノクチナガオオアブラムシは一生をケヤキでアリと共生し過ごします。
このブログが公開される時には、養老の森もすっかり冬景色と思われますが、春への準備の季節ととらえれば何か心躍らされることにもなります。そして木々や虫たちは着実にその準備を進めています。森を去る前に出会ったオオバアサガラの葉痕と冬芽。葉は落ちてもすでに葉になる芽が形成され、「また森に来てくれる時を待っているよ」と微笑み返しているように見えました。
2021年もコロナ禍で各種イベントが開催されない状況となってしまいました。2022年は通常通りの開催となることを祈っています。
養老の森には、生き物たちの不思議で未知の世界がまだまだ残されています。各種イベントを通じ、一緒に発見できることを楽しみにしています。
(写真と文章:養老の森実行委員 守屋博文)